精神症状を覚えることは、正確な支援や適切な対応を行うために必要不可欠です。
思考に関する症状
- 思考制止
思考の流れが途中で突然止まり、次の考えが浮かばなくなる症状。 - 思考途絶
考えが突然止まり、思考の流れが途切れる症状。 - 考想伝播
自分の考えが他人に伝わってしまっていると感じる症状。 - 考想吹入
他人の考えが自分の考えの中に押し込まれてしまうという症状。 - 保続
一度考えたことや話した内容にこだわり続け、新しい話題に切り替えることができない症状。 - 連合弛緩
思考のまとまりがなくなり、話の内容が脈絡を欠いてしまう症状。
言葉のサラダ:単語やフレーズが無秩序に並び、意味の通じない発話になる症状。 - 滅裂思考
連合弛緩が重度化し、思考のまとまりが極端に失われ、話がバラバラで意味不明な状態。 - 観念奔逸
考えが次々と浮かび、思考の流れが非常に速くなる症状。話題が次々に移り変わり、話がまとまらず、飛躍しやすくなります。 - 作為体験(させられ体験)
自分の考えや行動が自分の意思ではなく、外部の何者かに操られていると感じる症状。 - 妄想
現実には根拠がないにもかかわらず、強く信じ込んでしまい、訂正が困難な状態。
出現形式による分類
一次妄想:全く根拠を持たない妄想。
二次妄想:状況、体験、感情などからある程度心理的に了解できる妄想。
妄想の発生過程による分類
妄想気分:漠然とした不安や異様な感覚を抱き、世界が変わったように感じる状態。
例:「なんとなく世界の雰囲気が違う」「何かが起こりそうな気がする」
妄想着想:突然、確信を伴う妄想的な考えが浮かぶ症状。
例:「自分は特別な使命を持っている」「政府に監視されている」
妄想知覚:実際の知覚(見たり聞いたりしたもの)に対して、妄想的な意味づけをする症状。
例:「赤い服を着た人を見て、これは自分に対する警告だ」と確信する。
妄想の内容による分類
被害妄想:誰かに監視されている、悪意を持たれていると信じる妄想。
例:「隣人が自分を盗聴している」「職場で陰謀が仕組まれている」
注察妄想:周囲の人が自分をじっと見ている、注目していると感じる妄想。
例:「電車の中でみんなが自分を見ている」「テレビが自分のことを話している」
罪業妄想:自分が重大な罪を犯した、取り返しのつかない過ちを犯したと信じる妄想。
例:「自分のせいで家族が不幸になった」「過去の些細な失敗で社会に迷惑をかけてしまった」
血統妄想:自分が特別な血筋を持っている、王族や偉人の子孫であると確信する妄想。
例:「自分は天皇の血を引いている」「歴史上の偉人の生まれ変わりだ」
誇大妄想:自分の能力や地位が実際よりも高いと確信する妄想。
例:「自分は世界を救う特別な力を持っている」「ノーベル賞を受賞する運命だ」
心気妄想:自分が重篤な病気にかかっていると信じる妄想。
例:「不治の病にかかっているのに誰も気づいてくれない」
嫉妬妄想:配偶者や恋人が浮気していると確信する妄想。
例:「妻が自分に隠れて浮気をしている証拠を探さなければならない」
うつ病の三大妄想
罪業妄想・貧困妄想・心気妄想です。否定的な内容の妄想が特徴的にみられます。
知覚に関する症状
- 錯覚
現実に存在するものを誤って知覚する現象。
例:「木の影を人の姿と見間違える」 - 幻覚
実際には存在しないものを知覚してしまう現象。
主な幻覚の種類
幻視
実際には存在しないものが見える。
例:「部屋に誰もいないのに人影が見える」「小動物や虫が這っているのが見える」
幻聴
実際には存在しない音や声が聞こえる。
例:「誰もいないのに悪口を言われている」「命令する声が聞こえる」
考想化声
自分の考えが声として聞こえる。
例:「頭の中の考えが声になって聞こえる」「自分の思考が外から読み上げられている」
体感幻覚
実際には起こっていない身体感覚を感じる。
例:「体の中に虫が這っている」「臓器が動いているように感じる」
感情に関する症状
- 抑うつ気分
強い悲しみや憂うつな気分が続く状態。興味や喜びを感じにくく、意欲が低下する。
例:「何をしても楽しくない」「気分が沈んで何もやる気が出ない」 - 躁気分
異常に高揚した気分が続く状態。自信過剰になり、活動的で話が止まらなくなることがある。
例:「なんでもできる気がする」「エネルギーが溢れて眠らなくても平気」 - 感情失禁
ちょっとしたことで涙を流したり、笑いが止まらなくなるなど、感情を抑えられなくなる状態。
例:「些細なことで涙があふれる」「自分でも制御できず突然笑い出す」 - 感情鈍麻
喜怒哀楽の感情が乏しくなり、周囲の出来事に対して反応が薄くなる状態。.
例:「嬉しいことがあっても何も感じない」「何が起きても無関心で感情が湧かない」
記憶に関する症状
- 前向性健忘
新しい記憶を形成できない状態。 - 逆向性健忘
過去の出来事を思い出せない状態。 - 作話
記憶の欠損を補うために、無意識のうちに作り話をしてしまう現象。 - 記憶錯誤
実際には体験していないことを、あたかも体験したかのように思い出してしまう現象。 - 見当識障害
時間、場所、人物など、自分が置かれている状況を認識する能力を見当識といい、これらのいずれか、またはすべてが障害された状態をいいます。
意識に関する症状
- 意識障害
昏睡
完全に意識を失い、強い刺激を与えても反応しない状態。
昏迷
外部刺激に対する反応が極端に低下し、ほとんど動かない状態。強い刺激に対してわずかに反応が見られることがある。
意識混濁
意識がはっきりせず、注意や判断力が低下している状態。
意識変容
意識の清明さが低下し、幻覚や錯覚、興奮などの精神症状が現れる状態。
- せん妄
注意や理解、記憶などの機能が急性に低下し、変動することを特徴とする状態。
その他の症状
- カタレプシー
筋肉の緊張が異常に高まり、受動的に取らせた姿勢を長時間保持してしまう。 - カタプレキシー
強い感情(驚き・笑い・怒り・興奮など)によって、突然筋肉の力が抜ける発作。 - アカシジア
じっとしていられず、体を動かさずにはいられない不快な感覚。抗精神病薬の副作用によるものが多い。
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