社会構造とその動態、行為者との関係性を捉えるための主要理論と概念を解説しています。
パーソンズのAGIL理論
パーソンズは、社会が安定して存続するために必要な4つの機能を提唱しました。
それぞれの頭文字を取って「AGIL」と呼ばれます。
- A（適応：Adaptation）：環境に適応し、資源を獲得・分配する機能（経済システムが担う）
- G（目標達成：Goal Attainment）：集団や社会の目標を設定し、それを達成する機能（政治システムが担う）
- I（統合：Integration）：構成員の関係を調整し、社会の秩序を維持する機能（法や道徳）
- L（潜在的パターン維持：Latency）：文化や価値観を継承し、構成員を社会化する機能（教育・宗教）
この4つの機能をバランスよく果たすことで、社会は秩序を保ちながら存続するとされます。
ホッブズ問題
ホッブズは著書『リヴァイアサン』において、「自然状態では人間は万人の万人に対する闘争状態にある」としました。この状態を避けるため、人々は契約を結び、国家（リヴァイアサン）という権威を作ることで秩序を成立させる必要があると主張しました。
→ 社会秩序の起源を考えるうえでの哲学的な出発点。
社会階層
社会階層とは、資源や地位の分配における格差構造のことです。
階層の決定要因として以下の2つがあります。
- 属性主義：生まれながらにして与えられる属性（家柄、性別、人種など）によって地位が決まる
- 業績主義：個人の努力や能力、成果によって社会的地位が決まる
近代社会では、業績主義が重視される傾向がありますが、完全な平等は達成されていません。
社会移動
社会移動とは、個人または集団の社会的地位が変化することです。以下のように分類されます。
- 世代間移動：親と子の間での地位の変化
- 世代内移動：同一人物が人生の中で経験する移動（例：昇進）
- 庇護移動：既存の上位者が下位者を引き上げる形式
- トーナメント移動：競争に勝った者だけが上昇できる形式
- 構造移動：個人の努力に関係なく、社会の構造変化によって生じる移動
ヴェーバーの3つの支配
マックス・ヴェーバーは、人々が権力に従う理由を3つに分類しました。
- 伝統的支配：慣習や伝統に基づく支配
- カリスマ的支配：個人の魅力やリーダーシップに基づく支配
- 合法的支配：法的手続きや制度に基づく支配
社会的役割
「役割」は、個人が社会の中で担う期待された行動のことです。
- 役割期待：ある地位に対して社会が期待する行動パターン
（例）教師という立場には「生徒に知識を教え、指導すること」が期待されている。 - 役割取得：役割を自らのものとして自覚し、遂行すること
（例）新入社員が自らの担当業務を理解し、「社会人として責任ある行動」を意識する。 - 役割猶予：役割の取得が一時的に保留されている状態
（例）大学生は将来的に「社会人になる」ことが期待されているが、現在はその役割が猶予されている。 - 役割距離：役割に対する心理的距離
（例）介護士として働いているが、「仕事」と割り切って接し、役割に深く没入しない態度をとる。 - 役割葛藤：複数の役割間で矛盾する要求が生じ、ストレスを抱える状態
（例）仕事では上司として部下を叱る立場だが、家庭では子どもの前で優しい父親でいなければならないため、葛藤を感じる。
社会的ジレンマ
個人が合理的な選択をしても、全体としては非合理な結果になる状況です。
- 囚人のジレンマ：個人が自身の利益を追求すると、結果的に協力した場合よりも悪い状況に陥ってしまう状況
- 共有地の悲劇：それぞれが自己利益のために共有資源が過剰利用することで、最終的にすべての人が損をする状況
- フリーライダー：自分はコストを負担せずに、他人の貢献によって利益を得ようとする行動
社会的行為の4類型
社会的行為とは、他者の存在を意識した上で行われる行動のことです。
- 目的合理的行為：目的に向けて手段を合理的に選択する行為
- 価値合理的行為：手段に関係なく、価値に基づいて行われる行為（信仰など）
- 感情的行為：感情に基づいて行われる行為（怒り、喜び）
- 伝統的行為：習慣や慣習に従って行われる行為（初詣など）
マルクスの社会階級理論
マルクスは、社会の構造を生産手段の所有関係によって捉え、社会を大きく2つの階級に分けて考えました。
資本家階級（ブルジョアジー）
- 定義：生産手段（工場、資本、土地など）を所有し、労働者の労働によって利潤（利益）を得る階級。
- 特徴：経済的・政治的に支配的な立場にあり、法律や制度もこの階級に有利に構築される傾向があります。
- マルクスの視点：ブルジョアジーは自らの利益のために労働者を搾取する存在であり、階級闘争の一方の当事者とされます。
労働者階級（プロレタリアート）
- 定義：生産手段を持たず、労働力を商品として資本家に提供し、賃金によって生活する階級。
- 特徴：資本家によって労働力が搾取される立場にあるとされ、日々の生活のために働く必要がある。
- マルクスの視点：プロレタリアートは団結して資本家階級と対抗し、やがては資本主義を打倒して新たな平等な社会（共産主義社会）を築く主体として描かれます。
その他関連する用語
- 社会構造：社会における制度・役割・関係などのパターン
- 制度化：繰り返される行動が習慣化・固定化され、社会的規範として定着するプロセス
- 逸脱行動とラベリング理論：社会の規範から外れた行動に対し、「逸脱者」とラベリングされることで行動が固定化される
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