今回は精神保健福祉士が知っておきたい代表的な精神疾患を挙げていきます。
不安障害
不安障害は、過剰な不安や恐怖を感じ、それによって日常生活に支障をきたす精神疾患の総称です。
全般性不安障害(GAD)
日常的なこと(仕事、人間関係、健康など)に対して過度な不安を感じて動悸、発汗、集中力低下、睡眠障害などが起こります。
パニック障害
突然、強い不安や恐怖に襲われ(パニック発作)、息苦しさ、動悸、めまい、死の恐怖などが起こります。
予期不安=過去の経験から「また発作が起こるのではないか」「失敗するのではないか」と不安になること。
広場恐怖
電車やバス、人込みなど、逃げられない・助けを求められないと感じる場所や状況で強い不安を抱き、外出を避けるようになります。
強迫性障害
不合理と分かっていても不安を抑えられず、手洗いや確認などの行為を繰り返し、日常生活に支障をきたします。
強迫観念=頭から離れない考えのことで、その内容が「不合理」だとわかっていても、頭から追い払うことができないもの
強迫行為=強迫観念から生まれた不安にかきたてられて行う行為
例:「汚染への不安から、必要以上に手を洗ったり、アルコール消毒を繰り返す」「戸締まりやガスの元栓などを何度も確認する」「物を一定の回数触る、決まった手順で行動(儀式行為)」など
解離性障害
強いストレスやトラウマが原因で、記憶や意識、アイデンティティなどが一時的に分離し、記憶喪失や別人格の出現、現実感の喪失などの症状が現れます。
解離性健忘
特定の出来事や個人的な記憶を部分的または完全に思い出せなくなります。
解離性遁走
自分の身元や過去の記憶を失い、突発的に家や職場を離れて放浪し、知らない場所で新しい生活を始めることがあります。
解離性運動障害
麻痺やけいれん、歩行困難などの運動機能の異常が生じます。
ガンザー症候群
わざとではなく、とんちんかんな返答(的外れ応答)をしたり、認知機能が低下したような言動を取ります。刑務所などの閉鎖された環境で生じる。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
事故・災害・暴力などの強いトラウマ体験の後、長期間にわたりフラッシュバックや過剰な警戒心、不眠などの症状が続き、日常生活に支障をきたします。数週間から数か月経って現れます。
フラッシュバック・・・過去のトラウマ体験が突然鮮明によみがえり、まるでその場にいるかのように感じる現象
アンヘドニア(無快楽症)・・・喜びや興味を感じる能力が低下し、以前は楽しかった活動に対しても満足感や意欲を持てなくなる状態
急性ストレス反応(ASD)
事故・災害・暴力などの強いトラウマ体験に直面した直後に、強い不安や混乱、麻痺したような感覚、現実感の喪失などの症状が一時的に現れる状態。通常は数時間から数日で回復します。
適応障害
生活環境の変化やストレス(仕事・人間関係・受験など)に適応できず、不安や抑うつ、イライラ、頭痛、不眠などの精神的・身体的症状が現れ、日常生活に支障をきたす状態です。
→ストレス因を取り除くことで改善しやすい。
身体表現性障害
様々な身体症状が長期にわたって続き、日常生活に支障をきたしているにも関わらず、検査をしても身体的な原因が見つからない状態です。
身体化障害
身体検査の結果は正常であるが、多様な身体症状(頭痛、腹痛、吐き気、しびれ等)を執拗に訴える。
心気障害
自分は重篤な病気にかかったのではないかと強く信じ込み、繰り返し病院を受診したり健康状態を過剰に気にしたりする。
摂食障害
体型や体重への強いこだわりから、食事の摂取を極端に制限したり、過食や嘔吐を繰り返したりする精神疾患で、健康や日常生活に深刻な影響を及ぼします。
神経性無食欲症
極端に体重が低下しても太ることへの強い恐怖があり、食事制限や過度な運動を続ける。ボディイメージの歪みがあり、栄養不足により月経不順(女性)、低血圧、低体温などの症状が現れる。過食を生じることもある。
神経性過食症
コントロールできない過食を繰り返し、嘔吐・下剤乱用・過度な運動などの不適切な代償行為で体重増加を防ごうとする。
睡眠障害
睡眠に関する問題が生じる状態の総称で入眠困難や途中で目が覚める、過剰な眠気などが見られます。
不眠症
寝つきが悪い(入眠困難)、途中で何度も目が覚める(中途覚醒)、早朝に目が覚めてしまう(早朝覚醒)などの症状があり、十分な睡眠をとることができない。
過眠症
夜間十分な睡眠をとっているはずなのに(少なくとも7時間以上)、日中に目覚めていられないような病的な眠気がみられる。
ナルコレプシー・・・日中の強い眠気や制御できない眠気が繰り返し起こる過眠症で、突然の筋力低下(情動脱力発作)を伴うことが多い。その他、睡眠麻痺、鮮明な夢、入眠時や覚醒時の幻覚がみられる。
心身症
ストレスや心理的要因が関与して、身体に実際の症状が現れる疾患です。
代表的な疾患
消化器系:胃潰瘍、過敏性腸症候群(IBS)
循環器系:本態性高血圧、心身性動悸
呼吸器系:過換気症候群
皮膚:円形脱毛症、慢性じんましん
内分泌・代謝:糖尿病の悪化
心身症は身体症状が主であり、うつ病や不安障害のように精神的な症状が中心ではないのが特徴です。
また アレキシサイミア(失感情症)の人は感情を適切に認識・表現できないため、抑圧された感情が身体症状として現れやすくなります。
チック症・トゥレット症
チックとは不随意に繰り返される素早い運動や発声のことで、一時的に抑えられても再び現れる特徴があります。
音声チック・・・咳払い、鼻を鳴らす、特定の言葉を発するなど
運動チック・・・まばたき、顔をしかめる、肩をすくめる動きなど
トゥレット症
音声チックを伴い複数の運動チックが1年以上持続する状態です。小児期~青年期の男性に多い。
レット症候群
遺伝的問題によって引き起こされるまれな神経発達障害で、ほぼ女児だけにみられ、生後6カ月間正常な発達がみられた後、歩行困難、体幹の不安定さ、呼吸障害、重度の知的障害、けいれん発作などの症状を伴った発達に異常が現れます。
パーソナリティー障害
その人の属する文化から期待されるものより著しく偏った内的体験および行動の持続的パターンであり、ほかの精神障害に由来しないものです。
A群(奇妙で風変わりなタイプ)
妄想性パーソナリティ障害:強い不信感や疑念を抱き、他者の言動を悪意的に解釈しやすい
スキゾイドパーソナリティ障害(統合失調質パーソナリティ障害):社会的関心が乏しく、対人関係を避けがちで、感情表現が乏しい
統合失調型パーソナリティ障害:対人関係が苦手で、奇異な思考や行動、認知の歪みがみられ、軽度の幻覚や妄想に近い体験をすることがある
B群(感情的で移り気なタイプ)
境界性パーソナリティ障害:感情や対人関係が不安定で、見捨てられることへの強い恐怖(見捨てられ不安)を抱き、衝動的な行動をとる
自己愛性パーソナリティ障害:誇大な自己評価を持ち、賞賛を求める一方で他者への共感が乏しく、批判に過敏
反社会性パーソナリティ障害:他者の権利を軽視し、規範を守らず、衝動的・攻撃的な行動をとりやすい
演技性パーソナリティ障害:注目を浴びたがり、感情表現が誇張され、他者の関心を引くために行動する
C群(不安で内向的なタイプ)
依存性パーソナリティ障害:他者への過度の依存、孤独に耐えられない
強迫性パーソナリティ障害:完璧主義で秩序やルールに固執し、融通が利かない
回避性パーソナリティ障害:拒絶や批判を強く恐れ、対人関係を避けがちで、自分に自信が持てない
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